はてなブログからの再掲です。投稿日は元のブログの投稿日に合わせてます。神さんが逝った日
昨日の通夜と、今日の告別式、火葬が終わった。ちょっと落ち着いたので、今日は6日にあったことを記録に残しておく。
午後4時過ぎに、幼稚園から携帯に電話があった。2時にバスで送ったときに迎えに来なかったので子供二人を幼稚園に連れ帰ったそうだ。自宅に電話しても誰も出ないけど、今から子供たちを送りたいのでどうしたらいいかと。折り返し連絡すると答えた。
たまたま携帯に登録していた近所の山口さんに電話して、家の様子を見に行ってもらった。実家の母親にそのことを連絡し、出張中の上司にも連絡して会社を早退した。山口さんから電話があった。照明がついてるし、テレビもついてるし、エアコンもついている。神さんは横になっている。電話にもインターホンにも反応しない。明らかに変だ。救急車を呼んでもらった。
電車を待っているときに山口さんから電話があった。救急車が着いたけど、鍵があいてないからガラスを割って入っていいかと。「割ってください。」と答えた。その後、山口さんは、上の子は近所の別の人の家にいて、幼稚園の子供たちもそちらに連れて行くよう連絡したと教えてくれた。
電車の中で救急隊員の人から携帯に電話が入った。「心肺停止状態です。病院に移送します。」と。このとき、神さんの命をあきらめる覚悟ができた。だって、2時にお迎えに行ってなくて、5時に心肺停止が分かったなんてほとんど無理。自宅には戻らずに病院に直行。ちょっと待たされている間に、神さんの両親に連絡した。今なら最終の新幹線に間に合うから急ぐと言った。自分の父親に連絡し、病院に来る前に子供たちを拾ってくるようお願いした。
しばらくすると、治療室に連れて行かれた。治療室に酸素吸入とか心臓マッサージとか、蘇生のための処置をやっていた。手を握ってみた。まだほんのりと温もりが残っていたけど、生きている人の体温じゃなかった。CT の写真を見せられ、脳幹部分で大量に脳内出血があることを説明された。「脳幹は生命維持のために最も重要な・・・」と医師が説明してくれる。そんなこと言われなくても知っている。脳幹なんて、発見が早くたってほとんど無理やん。最後の望みさえ残ってない。あらゆる処置を試したけど蘇生しないので治療を止めていいかと問われる。「はい」と答えた。治療が中止され、死亡を確認した。17時37分。
神さんが病院の治療室から霊安室に移された。しばらくの間二人きりになった。安らかな寝顔に救われた。死ぬ前に苦しんでないのがよく分かる。たぶん、家事を一段落して、ちょっと一眠りしていた間に脳内出血があったんだろう。安らかな寝顔を見ていたら、キスしたら生き返る物語を思い出した。物語のように生き返る奇跡が起こらないかと、そっとキスしてみた。冷たかった。奇跡を信じたかった。でも奇跡は起こらなかった。
病院の人に呼ばれて待合室に行くと、うちの両親と子供が待っていた。「かあちゃんは死んじゃったよ。」と子供たちに伝えた。上の子だけは事態を理解したようで、たくさんの涙を流した。
警察が来た。ひとりで自宅で倒れていたので、他殺の可能性があるから、自宅を確認したいと。警察の車に乗った。たまたま雪で都市高速が通行止めになった影響ですごい渋滞。抜け道を教えて、そちらから自宅へ。割られた窓の周りに散乱したままのガラス、神さんがいつも着ているダウンベストが切り裂かれて、羽毛が散らばっている。その近くに包丁が置いてあった。神さんが寝ていた足元あたりには AED の空袋が落ちていた。救急隊の人が何をやったのかが生々しい。家の間取図や、割られた窓の位置、倒れていた場所などを確認した後、再度病院へ。外傷などがないかを検査するらしい。
警察の検死後、病院の人が神さんの体をきれいにしてくれた。普段はいつもスッピンで、化粧なんてしないのに、薄化粧されてたのでちょっと複雑な気分。そうしている間に、父親が葬儀屋に連絡してくれた。しばらくして、葬儀屋の車が病院についた。霊安室から自宅まで、神さんを運んでくれる車が。
霊安室から自宅のリビングに敷いた布団の上に移された神さん。その横には、葬儀屋の人が用意した線香やロウソクが置かれた。葬儀屋の人が葬儀の見積を作ってくれている。少ない選択肢の中から、神さんの好みに一番合いそうなのを選んだ。95万円なんて金額を聞いたけど、そんなことはどうでもよかった。何も食べていないので、父親が弟に弁当を買ってくるよう頼んだ。
通夜と葬儀の調整をして葬儀屋が帰り、両親も帰ったので、神さんの横で酒を飲むことにした。神さんが最近気に入っていた焼酎をお湯割にして飲みながら、神さんに話しかけた。いつもは自分から話しかけることなんてなくて、神さんの方が話しかけてくれていた。それに「うん、うん。」とだけ生返事していた自分を悔やんだ。悲しいけど涙も出ない。だまされているだけだと思いたい気持ちと、すぐ横に寝かされている神さんが呼吸もしていないの現実の間で、ものすごい葛藤に襲われる。弟が買ってくれた弁当を食べようとしたけど喉を通らない。食わなきゃいかんと思って無理やり押し込んだ。
12時過ぎに、最終電車で最寄の駅に着いた神さんの両親から電話があった。「どこ?」と聞かれる。「自宅」と答えたら、落胆した声で「そう、いまからタクシーでそちらに行きます」と言った。そして神さんの両親を自宅に迎えた。これまでの経緯を説明した。「すみません」と謝った。「そんなことは言わなくていいのよ」と神さんの母親が答えてくれた。これまでの経緯を説明し、最近、家族でどういうことをしていたかとか、いろいろと伝えた。
神さんの両親が寝てから、神さんの死を日記に書いた。3時過ぎになって2階のベッドから布団を持ってきて神さんのすぐ横に寝た。とても疲れていたのですぐに眠れると思って横になった。神経の図太さには自信があったから、眠れると思っていた。でも一睡もできなかった。